鹿沼で唯一、戦前の建物がかたまって残っている場所です。
こういう通り沿いに建つ町家形式の民家にはほとんどの場合、土間が備わっています。以前は商売のためのスペースだったり、家事のスペースだったり、裏庭へ抜ける通路だったりしました。そんな土間について。
土間を持つ家にお客さんが来ると、必ずそのお客さんは自然に土間の中に入って、住人が出てくるのを待ちます。今日の住宅ではきっと、玄関へ入るどころか、その扉さえも開けずに待つことになるのでしょう。この違いはいったい。
やはり、土間は土足であることが大きいのではないでしょうか。
「家の中では靴を脱ぐ」の意識が常識なのが日本人ですから、これは言い換えれば、「靴を脱がない土間は外」となります。家の内と家の外の境界が曖昧なのです。だから知らない人でも入りやすい。
鹿沼の旧市街のように歴史的に古い町のおばあちゃんなんかはよく、家の前の道をほうきで掃いていたりします。これはきっと、「町はみんなの物」と考えているからでしょう。これも「家の中と家の外の境界が曖昧」だからこそではないでしょうか。
家と町がはっきり区切られず、ゆるやかに繋がっているから、家と繋がった町も自分のものとして大切にしているのです。
自分の家の塀の中だけがきれいであれば良い、という考え方とはちょっと違います。