朝5時、眠い目を擦り向かったのは兄の畑.
ギャルソンのベルトとスーツを脱ぎ就農してから一年が経った彼が志すのは
農薬や化学肥料はもちろん有機肥料やたい肥も一切加えない自然農法.
第三者機関へのセシウム検査にもかけているのだから徹底している.
当初、そんな手間のかかること一人で続くのだろうかと冷たい目で見ていた僕も
今日の収穫(まだ試作段階ではあるけれど)をみてその印象は大きく裏切られた.
自分でもぎった空芯菜にズッキーニ、キュウリを手に帰り道、
兄の孤独な一年間にありがとうとつぶやく.
とれたてのそれらを口に運ぶ.
これ以上の贅沢を僕は知らない.